マウスピース矯正とは、マウスピース型カスタムメイド矯正装置を用いた矯正のことです。商品名で言えばインビザライン、クリアコレクト、アソアライナー、KENLINEなど様々なものがあります。最近ではキレイラインやsmile direct clubなど様々な選択肢も出てきました。その中でも、インビザラインは現在100ヶ国以上の国々で提供され、何百万人もの患者さんの歯並びの治療を行ってきました。
インビザラインの特徴
透明で目立ちにくく取り外しが可能であること、アレルギーなどが出にくいことから、患者さんによっては今まで矯正治療をあきらめていた方でも治療を受けられるようになりました。
なぜ歯を動かすことが可能なのか?
インビザラインの仕組みとしては、最終的な歯並びを設定し、各歯ごとに0.25mmずつそこに向かって動かしたステップをシミュレーションし、各ステップごとにアライナーを作製します。どんな装置であっても、歯は組織が正常であれば適切な力をかければ動きます。ですのでしっかりとフィットしていれば、毎アライナーごとに0.25mm動かす力が加わっているのです。
インビザライン治療を成功させる条件
- 適切な検査、診断
- 適切なシミュレーション、技工指示
- 適切な使用方法(使用時間、適合、補助器具の使用)
- 再製作
1、適切な検査、診断
インビザラインも今までの矯正治療と同じように、魔法のような動きをするわけではありません。今までできなかった歯の動きが可能になるとか、抜歯での矯正が必要であるものが歯を抜かなくてもよくなるということもありません。
結局、マウスピースでの矯正治療であっても最初にすることは変わらず、装置によって診断も変わることはありません。歯列矯正に置いて最も重要なのは、どんな装置を使うことでもなく状態を把握する診断なのです。
2、適切なシミュレーション、技工指示
診断は変わることはありませんが、一般的なブラケットを使用した矯正治療とマウスピース矯正では、歯を動かす上で得意なこと不得意なことがあります。矯正治療中に術者が注意しなければならない動きとしてボーイングというものがあります。これは、抜歯治療などの移動距離が多い治療で起こりやすく、歯が倒れ込んできてしまう動きです。あまりにも大きなボーイングはこれを治すために治療期間が伸びてしまうことがあります。
特にマウスピース矯正では従来の矯正装置と比較してボーイングが起こりやすいため、慎重に歯を動かす必要があります。そのため、当初からボーイングがおきりやすいと判断する大きな移動が存在する場合にはステップを踏んだ技工指示が必要になります。
あまりにも苦手な動きを多く含む場合は、他の矯正装置(ラビアルブラケットやリンガルブラケット)を一時的に装着した方が良い場合もあります。苦手な動きに対しては、他の矯正装置で治療を行うコンビネーションの治療法も選択肢の一つとして有効です。無理な治療計画でないことも成功への鍵となります。
3、適切な使用方法(使用時間、適合、補助器具の使用)
従来の治療と異なるのは、患者さん自身で取り外しができるという点です。これはカリエスなどに対しては歯磨きしやすくメリットとなりますが、デメリットにもなり得ます。マウスピース矯正は装着すれば動きますが、装着しなければ全く動きません。そのため少なくとも20時間以上の使用が必要です。
そして使用する上で重要なのは、マウスピースと歯の適合です。マウスピースが浮いた状態で使用していても理想の動きにはならず、むしろステップが進むにつれて理想とはかけ離れた歯並びになってしまいます。そこでアライナーチューイーの確実な使用が成功への近道です。アライナーチューイーは各社様々な商品が出ていますが、アライナーを装着後1-2分ガムを噛む要領で使用することでアライナーの確実なフィットをアシストします。
また、マウスピース矯正であっても目標設定によっては補助器具の使用が必要になる場合があります。一般的には、ブラケットの治療でも多様される顎間ゴムはマウスピース矯正でも必要となることがあります。こちらがドクターの指示通り使用できない場合も目標達成できない理由の一つとなります。
4、再製作
マウスピースでの治療においては、動かし方も確立され、抜歯してのマウスピース治療も不可能ではなくなりました。しかし、上記したように、そのような治療では多くのステップを踏む必要があり、アライナーの枚数が100−200枚になることもあります。歯列矯正は生体の機能を利用しているため、当初のシミュレーションの通り最初から最後までいくことはなかなか難しく、途中での作り変えが必要になってきます。
適合が悪くなってきたとドクターが判断した場合は、再診断の上すぐに再製作をした方が良いこともあります。